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未来の扉がここに!『第46回東京モーターショー2019』

さらに多くの夢と快適さを乗せるバスの世界!『第46回東京モーターショー2019』

2019年10月24日〜11月4日の12日間、江東区・有明の東京ビッグサイト(青海・西・南展示棟)、MEGA WEB、シンボルプロムナード公園などにおいて、『第46回東京モーターショー2019』が開催されました。テーマは「OPEN FUTURE」。「クルマ・バイクのワクワクドキドキ」から「未来の暮らし」「未来の街」にまで広がりを見せたイベントには、2017年の前回からなんと7割増となる130万人以上が来場し、未来のモビリティ社会を楽しく体感しました。
勇壮な姿を見せるさまざまなバスにも注目が集まり、多くの来場者が試乗したりゲームを楽しむなど、たいへんなにぎわいでした。そんな会場の様子をレポートします。

 

■会場間をワクワクで結ぶカラフルなバス

●青海と有明をつないで活躍するシャトルバスの姿

『第46回東京モーターショー2019』の会場は、東京ビッグサイトの新設された青海展示棟を含む青海エリアと、西・南展示棟を含む有明エリアの大きく2つに分かれ、両エリアをつなぐ「OPEN ROAD」などでも開催されました。このため、エリア間をつなぐシャトルバスが大活躍。単なる交通手段としてだけではなく、イベントのスケール感とワクワク感を増幅させていました。それでは、バスのブースのある青海展示棟へ行ってみましょう!

 

広域開催に伴う来場者の移動手段として、会場間シャトルバスが活躍

■子どもたちを夢中にさせたバスのアトラクション

●三菱ふそうの「エアロクィーン」のまぶしい輝き

青海展示棟のAホールに入り、まずは、三菱ふそうのブースへ。そこにはスーパーハイデッカータイプの大型観光バス「エアロクィーン」の2019モデルの勇姿がありました。バス前方の乗降口側では、運転手の帽子を被って記念撮影もできる、子ども向けの乗車体験が大好評。たくさんの子どもたちが、笑顔で「エアロクィーン」にふれていました。

 

グッズ販売スペースにも多くの人が訪れていました
コンパニオンのお姉さんたちがお出迎え

男の子も女の子も列を作って運転席に乗り込んでいきます
さまざまな色にライトアップされた会場も
「エアロクィーン」を引き立てていました

●なんと! バスの中にスロットカーのコースが!

さらに多くの人たちを夢中にさせたのが、「エアロクィーン」の車内に設けられたスロットカーの体験コーナー。バス後部の非常口から入ると、そこには広々とした空間をいっぱいに使ったコースが出現しました。コースアウトしないように5周完走をめざすというアトラクション。大人は子どもにかえり、子どもは大人顔負けの運転テクニックを披露していました。

 

バスのゆったりした車内空間を
再認識させられる本格的コースでした

コースを走るのは三菱ふそうのトラック
「キャンター」のミニモデル

 

 
乗車体験のできるマイクロバス「ローザ」も展示されていました

 

■変幻自在に暮らしを最適化するモビリティコンセプト

●モビリティの概念を変える未来の「FlatFormer」

続いて、日野自動車のブースへ。ここでは「Transportation Every Happiness」をテーマに、日野自動車が思い描く未来の持続可能で豊かな暮らしを表現。広い特設ステージでは、東京モーターショー向けに制作されたアニメーション「あの日の心をとらえて」が上映され、来場者の目を惹いていました。ここでは、変幻自在に暮らしを最適化するモビリティコンセプト「FlatFormer(フラットフォーマー)」を世界初公開。それは、人やモノの移動を効率的にするだけではなく、サービスを通じて人々に価値を提供する場へとモビリティを進化させるものです。社会やお客様のニーズに合わせ、自由度の高い変幻自在なボディを搭載することが可能で、さまざまな使用用途に対応。この「FlatFormer」によってサービス自体が移動を手に入れ、一人ひとりのHappinessを叶えることができるというものです。

「FlatFormer」は、上に載せるもの次第でさまざまなサービスに
活用できるフラットな動力プラットフォームです
未来のモビリティ「FlatFormer」が存在する世界を表現した
オリジナルアニメ「あの日の心をとらえて」が公開されました

 


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●先進技術の結晶として考えられている「FlatFormer」

日野自動車株式会社のデザイン部 創造デザイン室 未来プロジェクトグループの主管である若生倫義さんに「FlatFormer」についてお話をうかがいました。「自動運転を前提とした電気自動車ですからエンジンがなくなってモーター駆動になり、なおかつ低床部分の面積を最大化するためにフレームやサスペンションなどの技術も含めて考えられています。すべてに先進技術を盛り込みながら、パッケージとして可能なことに挑戦しようとしているのです。今回はアニメ制作会社のサンライズさんの力をお借りして、モデルとアニメーションを同期させながら訴求することで、とても分かりやすいなどの評価をいただいています。また、こういうクルマがあったら本当に便利ですねという声も寄せられています」と笑顔で語られました。

お話をうかがった、日野自動車株式会社の若生倫義さん
 
「FlatFormer」を分かりやすく紹介した
パネルも用意されていました

 

●自動運転技術の安全性を支える取り組み

日野自動車では、路肩退避型のドライバー異常時対応システムのシミュレーターも出展。このことについて、日野自動車株式会社のADAS開発部 第1先進システム開発室の幡谷俊輔さんにお話をうかがいました。「2019年に自動検知式ドライバー異常時対応システムを商用車では世界で初めて採用しましたが、今回はドライバーモニターを使って異常を検知するシステムに加えて、路肩退避型という新たな技術を紹介しています。ドライバーが倒れるなどの異常を検出した後で、自動で路肩にクルマを誘導して退避させるシステムです。この場で、さらに進化した安全性能を体験していただけたらと思います」とのことでした。

実際にどのような技術であるのかを
シミュレーターで体感することができます
日野自動車株式会社の幡谷俊輔さんと
技術を説明した映像パネル

 

■国産初のハイブリッド連節バスが登場

●まさに効率的なモビリティを実現する「エルガデュオ」

続いては、いすゞ自動車のブースへ。今回のコンセプトワードは「Create with you.これからも「運ぶ」を支えるために」でした。ここでは2019年5月末に発売された、国産初のハイブリッド連節バス「エルガデュオ」にITS(高度道路交通システム)の装置を搭載したタイプが堂々登場。いすゞ自動車と日野自動車によって共同開発されたものです。効率的な大量輸送を実現するとともに、ハイブリッドシステムの採用によって環境負荷にも配慮。ドライバー異常時対応システムなども搭載されています。

 

全長18mという圧巻のスケールを誇る連節バス「エルガデュオ」

フロントもいい表情をしている「エルガデュオ」
連節機のジャバラの部分を見ているだけでも
ワクワクするものがあります

●さまざまな機能も搭載された「エルガデュオ」

さらに「エルガデュオ」には、自動でバス停へ誘導する「プラットホーム正着制御」、先行車との車車間通信により自動で加減速を行う「協調型車間距離維持支援システム」、車外の移動物を検知する「視覚支援システム」など、次世代都市交通システム(ART)を想定した技術を搭載しています。説明員の方のお話では「駆動軸が後部にあるために、押し出す形で運転をサポートしていることに驚かれるお客様もいます」とのことでした。

バリアフリーで車いすも2台に
対応できるように工夫されています
「エルガデュオ」の運転席には
ドライバーをサポートする機能が満載

車内から見た「エルガデュオ」の連節機部分
車内でも全長18mのスケールが十分に感じられます

 
連節機の上部横にはモニター表示もあります


取材後記

2019年の東京モーターショーは、モビリティというキーワードから、新しいバスの姿が鮮やかに浮かび上がってくるようでした。それはまさに、全体テーマでもある「OPEN FUTURE」の世界。新たなフォルムも、新たな安全性能も、すべてが未来にしっかりつながっていると感じさせるものでした。試乗あり、アトラクションあり、映像ありと、さまざまな工夫によって来場者を楽しませたバスの会場は印象に残り、次代のバスをしっかりと体験できるものでした。胸をときめかせる明日のモビリティ社会の中で、バスの存在はさらに大切なものになっていくでしょう。


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バスの最新技術を体験! 第4回『バステクin首都圏』

秋晴れの幕張で開催された体験型イベント! 第4回『バステクin首都圏』

2018年11月2日(金)、第4回「バステクin首都圏」が千葉市の幕張メッセ屋外展示場と隣接地で開催されました。主催は「バスラマ」でおなじみの、株式会社ぽると出版。日本バス協会・中央技術委員会全国大会との連携イベントになっています。秋晴れの中、屋外開催であることから多くの実演を含むさまざまなプログラムが催され、全国から集まった方々が会場に足を運び参加されている姿が見られました。
基本的には話題のバス車両および周辺技術・機材が一堂に会し、情報を共有し合うバス業界向けのイベントですが、一般の方々もご来場され、楽しみながらバスに触れる一日になりました。

第1会場、第2会場共に、各社のさまざまなバスが集結しました

■ステージ上でもさまざまな技術をアピール

●各社の見どころがよく分かるプレゼンステージ

いつも好評の体験型バスイベント「バステクin首都圏」は今回が4回目の開催になります。朝10時から夕方4時までの開催でしたが、朝から多くの人々が会場を訪れていました。メインのプレゼンステージは、午前の部が10時30分から、午後の部が13時30分からスタート。出展している各社の人たちが順番にステージに上り、見どころなどをアピールしました。

午前中から秋晴れの日差しのもと、多くの人たちが
プレゼンステージに見入っていました
各出展企業がバスの最新技術や見どころなどを、
パネルなども使いながらアピールしました

【インタビュー】株式会社ぽると出版の和田由貴夫さん

株式会社ぽると出版 バスラマ編集長の
和田由貴夫さん

●これからも多くの人に喜んでいただけるイベントへ

バステクを主催する株式会社ぽると出版でバスラマ編集長の和田由貴夫さんにお話をうかがいました。「元々はバスラマの創刊20周年記念事業の一環で、2010年に大阪で『バステクフォーラム』というイベントを初めて開催しました。こちらは2018年で9回目、次回が10回目になります。バスに関する多くのイベントには、おもてなしをする・されるといった関係がありますが、このイベントはみんながバスのいろいろな情報を共有できる場所。しかも屋外開催ですから、煙を出したり、音を出したり、道を走ったりもできます。衝突被害軽減ブレーキなども、ここで実際に体験できることで話題になりました。大阪では毎年開催してきた『バステクフォーラム』ですが、首都圏でもぜひやってほしいという要望がたくさんあり、3年前の2015年に第1回の『バステクin首都圏』を埼玉スタジアムで開催。第2回からここ幕張で実施しています。私たちはニュートラルな立場の出版社ですから、競合関係もなく、皆さんに親しんでいただける部分もあると思います。これからもカジュアルな雰囲気の中で情報共有していただきながら、多くの人に喜ばれ期待されるイベントにしていきたいと思います」…と、歴史的な背景も含めて丁寧にご紹介いただきました。

■エンジンルーム自動消火装置の実演

●激しい火災もウォーターミストで安心消火!

プレゼンステージの横では、株式会社ニチボウによる、エンジンルーム自動消火装置の実演が行われました。万一のエンジンルームの火災、電池火災、燃料火災など、あらゆる火災を急速消火する電源不要の「ウォーターミスト消火システム」を紹介。迫力のある炎と瞬時に消火される様子を目の当たりにし、多くの人の感心する表情が見られました。

まずは装置などを説明。かなりの迫力があり、
毎回バステクでの目玉となっている企画です
 
株式会社ニチボウが販売するウォーターミスト消火システム
「フォグメーカー」のデモンストレーション。
振動に強い特許構造のシリンダーが、狭い空間にも対応します

ここで50ミクロンという小さい粒子の
ウォーターミストを放出!
みるみるうちに庫内の温度が下がっていきます。
もうすでに334℃まで下降
模擬エンジンルームに火をつけて、
温度は631℃まで一気に上昇しています

午前中の実演では多くの人々が見学に訪れていました
(他の実演写真は夕方の回のもの)
大量の水蒸気が出て鎮火。61℃まで下がっています。
さらに再発火リスクも最小化されるとのこと

■特別展示の燃料電池バスなどにも注目が集まる!

●次代の先駆けとなる東京都交通局の「SORA」

第1会場では、東京都交通局の燃料電池バス、トヨタ「SORA」も展示されました。東京都交通局では2017年3月から、市販車では日本初となる燃料電池バスの運行を開始。燃料となる水素を車載の高圧タンクから燃料電池に供給し、そこで空気中の酸素と化学反応させて作った電気でモーターを駆動させ走行させています。また、燃料電池バスは災害時の電力供給にも貢献することができます。

「SORA」の運転席。視界支援カメラシステムなども
装備されています
「SORA」は、都05-2系統
(東京都丸の内南口〜東京ビッグサイト)を運行しています

普段は見ることのできない部分も公開され、
訪れた人も満足されていました
「SORA」の後部座席。
清々しいカラーリングも魅力です

●安全運転訓練車などもお目見えし、来場者の興味を惹く

特別展示された日の丸自動車興業の「SKY BUS」に乗り、2階からの特別な視界を楽しむ人の姿も見られました。また、京成バスの安全運転訓練車「S.D.T.B」にも多くの人が乗車。京成バスが運転士教育の充実による安全性向上・接客向上・燃費節減などを目的に導入した訓練車で、アイマークレコーダーや、車内・車外安全確認器、サラウンドアイなどを装備したバスに関心が寄せられました。

「SKY BUS」の2階から各社の展示ブースを
見渡すこともできました
 
第1会場の中央に登場した
ネオプラン製2階建てオープントップバス「SKY BUS」

車内には訓練用の装備や燃料流量計などが搭載されていました
安全運転訓練車「S.D.T.B(Safety Driving Training Bus)」

 
 
いかに安全性を向上させるかなど、
さまざまな工夫の盛り込まれた訓練車です

■第2会場でも車両展示や試乗・実演などを開催

●新たなバリアフリーの取り組みも紹介

道を隔てた第2会場にも多くのバスが集結。その勇姿が集まった人の目を楽しませていました。そうした中で、日野自動車の「セレガ」のリフト付きタイプも展示され、車いすの利用者による実演も行われていました。

大型バスの勇姿が並ぶ第2会場の方にも、多くの人が訪れていました

 
 
日野「セレガ」ではリフトを昇降する実演も行われました

■さらに新しい安全性能も実際に試乗体感!

●日野「セレガ」搭載のドライバー異常時対応システム「EDSS」

第2会場では、午前と午後の計3回、日野自動車「セレガ」における最新鋭のドライバー異常時対応システム「EDSS」を体感する試乗会が行われました。「EDSS(Emergency Driving Stop System)」とは、ドライバーに急病などの異常が発生した際、ドライバー自身や乗務員がドライバー席のスイッチを押すか、もしくは乗客が客席上部のスイッチを押すことで、車両が制動スタート。徐々に速度を落として停止するというものです。
2016年に軽井沢で起きたスキーバス転落死傷事故など、大型バスの重大事故が相次いだことを教訓に、国土交通省が定めたガイドラインに基づき、メーカーによる新たな開発が進められています。この「EDSS」によっても、ドライバーの急変時の緊急停止で、大きな事故を少しでも防ぐことができます。

客席上部に設けられた非常ブレーキのスイッチ
日野「セレガ」で走行しながらの「EDSS」の実演。
システム作動時にはハザードランプの点滅や
ホーンにより、周囲の注意を喚起します

「セレガ」の車体には「衝突被害軽減ブレーキ」
「車線逸脱警報システム」「ドライバー異常時対応システム」の
ステッカーが貼られていました
実際に乗客がスイッチを押して、バスが安全に停止するまでを
体験することができました

■会場を飛び出した超節水型洗車機の見学ツアーも!

●超節水型洗車の特許技術である「Arash」を体感

会場を飛び出して、京成バス営業所でJR東日本コンサルタンツ製の超節水型洗車機「BIG WASHERⅢ」を見学するツアーも計4回行われました。会場を出発して戻ってくるまで約60分。途中で車窓からは美しく輝く海も見えるなど、お得感満載の企画でした。「Arash(アラッシュ)」とは、微細なミストと強力なエアーによる革新的な洗車技術。車体がすみずみまで美しくなり、拭き上げ作業の手間も軽減。さらには超節水で水道代を大幅に削減できるという、まさに優れもののシステムでした。

操作が非常に簡単であることなどの
説明も行われました
京成バス営業所に到着すると、
まずはどのような洗車技術なのかを説明

細かな水滴が飛び散る迫力の様子を、
リアルに体験できました
いざ、洗車へ。パーサーブラシと呼ばれる
特殊なブラシも活躍します

       
洗車が終わりきれいになった車体を、
多くのツアー参加者が見つめていました

■衝突防止補助装置を分かりやすく実演!

●追突警報システム「モービルアイ」を公道で確認

テレコムが販売する後付け型の衝突防止補助装置「モービルアイ」の効果を、公道で確認する実演が計5回行われました。丁寧な説明とともに、大型モニタにシステムが表示され、車間距離に伴う警報を走行とともに確認することができました。

大型モニタにシステムが映し出され、
実際の車間距離と警報の作動を確認できました
システム搭載車に試乗できることで、
そのメリットがよく伝わりました

 
なお、会場ではどの展示が参考になったか、
来場者による投票も行われていました


取材後記

大阪で始まったイベントが好評を博し、これまで大阪では9回、首都圏では4回の「バステク」が開催されました。日本バス協会・中央技術委員会全国大会との連携イベントでもあり、今回の「バステクin首都圏」に今まで以上の多くの方々に足を運んでいただけたことは、とてもうれしく感じました。このイベントはバス事業者、メーカー、そして利用者の出会いの場であり、情報を積極的に交換する場。各出展企業のブースでも至るところで活発なやりとり、意見交換などを目にすることができました。こうした取り組みを通じて、バスにおける技術がさらなる進化を遂げ、より一層「安全・安心なバス輸送サービス」を支えていくように願いたいと思います。


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雨にも関わらず大盛況!『バスまつり2018 in 晴海』

熱気と笑顔にあふれた『バスの日イベント バスまつり2018 in 晴海』

東京都交通局は2018年9月15日(土)、東京都中央区の晴海客船ターミナルで、「バスの日イベント バスまつり2018 in 晴海」を開催しました。このイベントは9月20日の「バスの日」にちなんで毎年この時期に行われ、今年が14回目。バスにまつわるグッズがたっぷり、各社のバスが集結して、マスコットキャラクターたちが大集合のステージイベントも楽しいと、世代を超えた多くの人たちに親しまれています。
屋内メイン会場での物販やステージ、屋外サブ会場でのバス車両展示、そして美味しいものたくさんの屋台など、どこへ行ってもたくさんの人でにぎわっていました。

外のサブ会場には、バス会社6社のユニークな車両が集合しました

■晴海が熱い! バスで熱い! 人で熱い!

●延々と続く列はイベントへの期待の表れ

「この日は朝からあいにくの雨でしたが、それでも10時にオープンするメイン会場の前には長蛇の列が。2017年の「バスまつり」には約8,700人が来場しましたが、今回も相変わらずの大盛況でした。入場無料ですし、3連休の初日に出かけてみようという方も多かったようです。

メイン会場の開場前には、傘をさしながらの長い列が真っすぐに続き、さらに折り返して長く続くほどの大盛況ぶりでした

楽しくてうれしいステージイベントもいっぱいでした
インパクトのある広告物も目を惹きました

●都内で路線バスとして活躍する6台のバスを展示

そしてサブ会場である大型専用駐車場の方にも多くの人が詰めかけていました。9時から10時までは車両撮影タイムを先行実施。都営バス、小田急バス、関東バス、京王バス、京浜急行バス、東急バスが勢ぞろいした会場に、シャッターの音が響いていました。後には運転士体験なども行われ、制服を着用し運転席に座っての記念撮影には、子ども連れのご家族も大喜びでした。

きゅんたのラッピングが施された「小田急バス」11-A9317
深川自動車営業所所属の新車「都営バス」S-C268

鮮やかな京王ライナーラッピングの「京王バス」J21214
かんにゃんのさまざまな表情が楽しめる「関東バス」A7109

8月に運行が開始されたばかりの
「東急バス GO!GO!ゴマちゃん号」T606
2020のナンバープレートもとてもおしゃれな
「京浜急行バス」M2850

【インタビュー】東京都交通局の島崎健一さん

交通局 自動車部 営業課長の島崎健一さん

●さまざまなプロフィールの人たちと未来へ向かうバスの姿

東京都交通局の島崎健一さんに、バスを取り巻く社会環境などについてお話をうかがいました。「バスまつりは2005年から毎年の開催で、今年で14回目。年々充実しパワーアップした内容でお楽しみいただいています。最近では高齢化が進み、身近な交通機関としてのバスのご利用が増えています。そうした中で、より使いやすさを重視した各社の取り組みがなされていると思います。一方で、外国人の方々のご利用も増えているため、バス停をはじめとする多言語表記など、ますますユニバーサルな方向へ進んでいるでしょう。また一方では、将来へ向けて子どもたちにも今からバスに親しんでもらえるように、各社のマスコットキャラクターたちも活躍しています。もちろん安全・安心の確保は最優先ですから、私たちも各社も安全管理にはできる限りの方策で取り組んでいます。今日のバスまつりでは、さまざまなバスの側面にふれてもらえるとうれしいです」…と、素敵な笑顔でご紹介いただきました。

■楽しめるサービスや物品販売に多くの人が詰めかける!

●新たに参加したJAFは、子どもたちに交通ルールの遵守を呼びかける

島崎さんからは、今年から新たに参加されたJAFについても、今回の見どころとしてご紹介いただきました。目玉企画としては、写真入りの「子ども安全免許証」を無料で作ってもらえるとのこと。「交通ルールを守ります。」という宣言の後には、1.しんごうをまもります。2.みぎひだりをたしかめます。3.おうだんほどうをわたります。としっかり書かれ、子どもたち一人ひとりに交通安全を啓蒙するアイテムになっていました。

立派なオリジナルの免許証ができることで、
子どもたちも大喜びでした
写真入りの「子ども安全免許証」には、
「交通ルールを守ります。」と大きく書かれています

●大にぎわいの物販コーナーには、レアな限定グッズもたくさん!

2階のメイン会場には各社の販売コーナーが並び、多くの人でごった返していました。お目当てのところへ駆けつける人も、掘り出し物に目を輝かせる人も、さまざまな表情で楽しんでいました。

おなじみバスラマの「ぽると出版」のコーナー
鮮やかなレモンイエローが目を惹く「はとバス」の物販コーナー

バスまつり2018限定「ガチャガチャ」も
家族連れに大人気でした
「学研プラス」のコーナーでは、大画面で
DVDの上映も行われていました

ピンボールのゲームもあり、デジタルのゲームに慣れている
子どもたちにも新鮮だったようです
「交通局電車部」のコーナーでも、みなさん対応に大忙し

きゅんたのグッズも人気だった
「小田急バス」のコーナー
新しいマスコットキャラクターも楽しみな
「京浜急行バス」のコーナー

「東急バス」のノッテちゃんの
のぼりの前で記念撮影する人の姿も
根強いファンも多い「京王バス」のコーナー

「関東バス」や「都営バス」の撮影スポットでも、記念撮影を楽しむ人の姿が多く見られました

豊洲市場のイッチーノや、PASMOのロボットも
会場を盛り上げてくれました

▪️ステージを盛り上げた協賛各社のマスコットキャラクターたち!

●人気者たちが勢ぞろいし、大人も子どもも大喜び

4階のステージ会場には、午前と午後に、それぞれのバス会社のキャラクターたちが勢ぞろい。撮影会などでもみんなと交流を深めました。登場したのは、東急バスの「ノッテちゃん」(みんなに乗ってほしいなぁという思いから)、京王バスの「ピンポン・パンポン」(双子のキャラクターです)、都バスの「みんくる」(みんなのくるま・都民の車が由来)、都電の「とあらん」(東京さくらトラム(都電荒川線)のキャラ)、関東バスの「かんにゃん。」(背中に羽がついています)、そして小田急バスの「きゅんた」(かわいい子犬です)。みんな愛嬌のある仕草で、相変わらずの人気ぶりでした。

左から、ノッテちゃん、ピンポン・パンポン、みんくる、とあらん、かんにゃん、きゅんた

お気に入りのキャラクターとの撮影もできて、
大喜びの参加者も多かったようです
みんくる、とあらんは、
何度もステージに登場する活躍ぶり

▪️会場を巡り歩く楽しみを増幅させたスタンプラリー

●7つのキャラクターのスタンプが笑顔をつくる

いろいろな楽しい企画の一つが、スタンプラリー。専用の用紙に各社のキャラクターのスタンプを7つ全部押すと、みんくるなどの都バスマグネットと、レア賞品抽選券がもらえるというものでした。

各所を巡ってスタンプを押し、4階に設けられたゴールへ到着!

【インタビュー】京急バスと都バスがイチ押しという丸山さんご家族

●イベント参加のワクワク感が素敵に伝わる!

無事にスタンプラリーのミッションをコンプリートした、笑顔の丸山さんご家族にお話をうかがいました。ちなみに今日はお父さんは来られなかったとのこと。弟の涼大くんは「京急大好き!」と言い切るくらい京急バスのファン。お兄さんの翔大くんは「バスも電車も大好き」とのことで、レアな電車にもかなり詳しそうでしたが、好きなバスは? との問いかけにはしばらく考えて「都バスかな」との答え。これからバスのおもちゃを買いたいというお話でしたが、お母さんのみどりさんは「予算的にどうかは検討します」とのこと。楽しいコメント、ありがとうございました!

丸山さんご家族、左から涼大くん、みどりさん、翔大くん

■今年も好評だった、盛りだくさんのステージイベント!

●子どもクイズ大会の出題内容に、大人たちもうなる

「バストリビア 子どもクイズ大会」は、バスに関するクイズに子どもたちが○か×かで答えるというもの。簡単な形式ですが、「最近、おもしろい名前のバス停が注目されることが増えていますが、京王バスのバス停の中に『たまらん坂』という名前のバス停がある」(答えは○)など、かなり難しい内容の出題に、周りで見つめる大人たちも楽しまれていたようでした。

クイズは○×方式で、とあらんサイドか、みんくるサイドに移動するというものでした

●明るい声が響く中で、みんなの笑顔が響き合う

さまざまな内容のステージイベントの司会進行を務めたのは、ホリプロ アナウンス室の久野知美さん。明るく優しくテキパキとした進行で、抽選会では当選者と心から喜び合う姿がとても印象的でした。

応募した中で、抽選で当選された方が、
激レアグッズを購入することができました
バス部品の購入抽選会の展示コーナーには、
数々の出品物が展示されていました

久野知美さんは、毎回のステージの司会進行で大活躍でした!

▪️おまつり感いっぱい! 会場のあちこちで思い出づくり

都営バスのぬり絵コーナーでは、
多くの子どもたちの真剣な表情が見られました

●参加して、体験して、いろいろなカタチでバスに親しむ

「都営バスぬり絵コーナー」は、子どもたちがバスに自由に色を塗って、記念に持ち帰ることができるというもの。他にも「バスダイヤ引き講習会」など、参加して楽しめる企画がいっぱいでした。

「バス車内での転倒事故が増えています。バスが止まってから
お立ち下さい」と書かれたうちわも配布
都営バスのぬり絵コーナーでは、
多くの子どもたちの真剣な表情が見られました

       
外にはキッチンカーなど12台の屋台が集結し、
どこを見ても大人気でした

●ステージイベントのエンディングは、レア賞品大抽選会

ステージの最後にも、みんくる、とあらんが登場! 多くの応募の中から公開抽選が行われ、温かい雰囲気の中で歓声が上がっていました。賞品のレア度も非常に高く、抽選に当たった人の中には、思わずガッツポーズをとる姿もありました。

会場にいる人に直接賞品が手渡され、喜びの輪が広がっていました


取材後記

9月20日の「バスの日」は、京都市内で115年前に初めてバスが運行した日を記念したもの。この日にちなんで東京都交通局が毎年開催している「バスまつり」は、今年も大盛況のうちに終わりました。バスは、場所と場所とをつなぐ交通手段であるだけではなく、人と人の心をつなぐコミュニケーションにも大きく関わっていることを、このイベントで改めて感じさせられました。そして、バスやバスキャラクターたちに目を輝かせる笑顔の子どもたちの姿を見ていると、変化を続けながらも1世紀以上の時を越えて走り続けてきたバスが、さらに愛される存在として未来へ続くことを願わずにはいられません。


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女性バス運転手についてみんなで語り合うイベント開催!

東京・表参道での「第1回 女性バス運転手の会」が活発な情報交換の場に

2018年3月28日、東京・表参道のレンタルスペース「hanami 表参道」で、一般社団法人 女性バス運転手協会が主催する「第1回 女性バス運転手の会」が開催されました。女性バス運転手がもっと活躍できる明日をめざすイベントでは、現役女性バス運転手によるトークセッションなどに、参加者の真剣なまなざしが集中。運転手志願者なども含めた交流会では、活発な情報交換が行われました。
全国から30人ほどの女性の方々が集まり、明るく華やかな雰囲気の中に熱気の感じられるイベントは、貴重なコミュニケーションの場となりました。仕事のやりがいや悩み、女性だからこそ輝ける点などをみんなでシェアできる有意義な時間となりました。

トークセッション後には、参加者が集合した記念撮影の時間も設けられました

■女性のバス運転手を増やすことが業界の活性化につながる

おしゃれなスペースの中、初めてのイベントは
活気にあふれた雰囲気で進みました

●北から南まで全国からの参加者で活気あふれる会に

「女性バス運転手の会」には、全国から多くの女性が参加。参加者は関東だけではなく、宮城、静岡、富山、大阪、奈良、島根、山口、鹿児島と、まさに北から南までとても幅広いのが特徴でした。開会前には、事前アンケートの回答「この会に期待する声」をスクリーンで紹介。その中には「同性のドライバーに会うことがないので、楽しみにしています」「人と話すのが苦手ですが、バスには興味があるので参加しました」「バス運転手への転職を考えています。これから妊娠・出産を経ても働き続けたいので、どんな会社を選んだらよいか。そしてバス運転手としての体力的な負担はどのくらいか聞いてみたいです」などさまざまな声がありました。

一般社団法人 女性バス運転手協会の
代表理事・中嶋美恵さん

●全国のバス運転手の女性の比率を10%にまで高めたい

そして13時に開会。まず初めに一般社団法人 女性バス運転手協会の代表理事である中嶋美恵さんから、女性バス運転手の現状や、今後の取り組みなどについて紹介されました。「バス業界の採用のキーワードは、若者と女性と言われています。女性のバス運転手を増やすことが、業界の活性化につながることは間違いありません。現在、全国のバス運転手に占める女性の比率は約1.5%で、1,600人くらいと言われています。当協会では、この比率を将来10%にまで高めたいと考えています。日本の女性バス運転手を増やし、その環境をより良いものにしながら、バス業界にイノベーションを起こせるよう取り組んでいきたいです。今日はみなさんの普段の想いをお話しいただき、何かをお持ち帰りいただけると幸いです。どうぞ楽しくお過ごしください」と語られました。

「バス業界にイノベーションを起こしたい!」
という力強い決意も
プロジェクターとスクリーンによって、
数々のデータが紹介されました

■みんなで意見を交換し魅力を発信する場を大切にしたい

国土交通省 関東運輸局の
自動車交通部長・森高龍平さん

●学問に王道なし…着実な一歩の積み重ねが実を結ぶ

続いて、国土交通省 関東運輸局の自動車交通部長である森高龍平さんからのごあいさつがありました。「我が国の経済にとって欠かすことのできない重要な交通基盤において、近年、労働力としてのドライバーの確保は重要なテーマです。そこで、国土交通省だけではなく、関係省庁が一体となって取り組みを進めています。関東運輸局でも『トラック、バス、タクシードライバー 魅力・情報発信サイト』でさまざまな情報を提供。さらに支局では高校などを訪問し、ドライバーという職業の魅力をお伝えしています。『学問に王道なし』と言われるように、このような会も含めて、地道にコツコツとドライバーのネットワークを作り、意見を交換し、魅力を発信することが大切ではないでしょうか。今日蒔かれた種から芽が出て、それを育てる作業を通じて、美しい花が咲くことを祈念いたします」と語られました。

日本バス協会 常務理事・船戸裕司

●車両や技術の進化で、運転に対するサポートも向上する時代に

続いて、当協会(日本バス協会)の常務理事である船戸裕司が登壇。「現在は乗合バスが約6万台、貸切バスが約5万台という中で、運転手は乗合バスが約8万4千人、貸切バスが約4万9千人となっており、男性の運転手が多い状況です。昔はパワステなどもない時代で、大型のバスの運転にはたいへんな苦労もあったと思います。しかし時代とともに車両や技術が進化し、運転に対するサポートも向上してきています。これからはさらに多くの女性の方々に大型二種免許を取得していただき、ともにバス業界を支えていただけたらと思います」と語りました。

■やりがいのある仕事でかけがえのない喜びも多い

●バス会社5社の女性バス運転手によるトークセッション

そして、現役女性バス運転手によるトークセッションでは、バス会社5社の女性運転手がステージへ。それぞれの自己紹介からスタートし、穏やかな雰囲気の中で、さまざまなエピソードを含めたトークが繰り広げられました。

5人の現役女性バス運転手が登場し、トークセッションが行われました

羽田京急バス株式会社・さとみさん

●接客のお仕事でもあるため、うれしいコミュニケーションも

羽田京急バス株式会社のさとみさんは、バス運転手歴3年。「今日は4月からの新制服で来ています。社会人になった時には外回りの仕事をしていて、運転も好きでした。そうした中で、3年前に母が女性バス運転手の求人広告を見たと伝えてくれたのが、現職のきっかけです。ちょうど会社で女性バス運転手を積極的に採用しようというプロジェクトがスタートした時で、私はその第1期になります。この仕事に就くまでは、男性社会で怖そうというイメージもありましたが、入ってみるとそんなことはありません。空港のターミナル間連絡バスを運転していますが、半分は接客のお仕事だと思っています。車いすや白杖を使われている方も多いのですが、お手伝いをしたりコミュニケーションを取る中で、お客様に『頑張ってね』『ありがとう』と言っていただくとうれしいですし、モチベーションが上がります」と語られました。

日立自動車交通株式会社・あきこさん

●年齢の壁のない仕事であると多くの人たちに伝えたい

日立自動車交通株式会社のあきこさんは、バス運転手歴1年3ヵ月。「千代田区と中央区のコミュニティバスを運転しています。バス運転手になったきっかけは前の会社でのリストラでしたが、以前に女性の運転手さんと出会って『女性でもバスを運転できるんだ』と記憶していたことが転職につながりました。この仕事を始めたのも遅く、まだ経験も浅いですが、そんな私だからこそ、年齢が上でもバスの運転手になれることを伝えたいです。ぜひ多くの女性の方々に仲間入りしてほしいと思います」と力強く語られました。

大新東株式会社・りえさん

●お客様との心の距離が近く、思い出の1ページに寄り添いたい

大新東株式会社のりえさんは、バス運転手歴12年。「私は舞浜リゾートエリアにてホテルの送迎バスを運転していますから、毎日とても幸せな気分で働いています。元々旅行業に携わっていたので、大型バスの運転がカッコいいなという興味はありました。ある日、クリスマスシーズンにリースを付けたバスと制服姿のドライバーさんに恋し、まさに憧れの仕事に就いて現在に至っています。お客様との心の距離が近い仕事ですし、『運転手さんと一緒に写真を撮りたいです』などと声をかけていただけると、そうした方の思い出の1ページに寄り添えると感じてうれしくなります」とにこやかに語られました。

東京空港交通株式会社・あゆみさん

●今後はさらなる仕組みづくりや環境づくりへの取り組みも必要

東京空港交通株式会社のあゆみさんは、バス運転手歴4年。「空港内のランプバスを運転し、旅客ターミナルビルから離れた場所の航空機までお客様をお連れしています。私は以前、羽田空港のポーターの仕事をしていたのですが、ここのリムジンバス運転手の女性第1号になるんだと心に決めて、去年入社しました。これからこの業界で女性バス運転手を増やすためには、労働時間や勤務体系の柔軟性も必要でしょうし、生理休暇などを取りやすい環境づくりも大切になるでしょうね」と貴重な見解を語られました。

京王バス南株式会社・きみえさん

●何かあれば助け合うという会社のサポートがある

京王バス南株式会社のきみえさんは、バス運転手歴17年。「路線バスや空港連絡バス、さらには富士山へ向かうバスなどの運転をしています。私はとにかく運転が好きで、最初はトラックから始めてバスの運転手に転身しました。トラックに比べると運転時間が短いし、お客様と会話をする機会が多いですね。私の会社では一昨年に女性専用休憩室ができました。女性がアイデアを出して作った空間で、ピンクと白を基調とし、かなりの広さがあります。テレビやソファ、リクライニングチェア、ベッド、シャワー室、洗面室などが完備しています。とても快適ですから、みなさんお待ちしています(笑)。これからは、このような情報交換のできる場がもっと増えて、決して男の仕事ではないのだと知っていただけるといいですね。もちろんたいへんなこともありますが、かけがえのない喜びもあります。私がこの仕事を長く続けられているのは、何かあれば助け合うという会社の人たちのサポートやアドバイスがあるからです。これから少しでも多くの女性バス運転手の姿を見かけられるように、私も頑張っていきたいです」と語られました。

女性専用休憩室にはリクライニングチェアやテレビなどがあり、ゆったりと寛ぐことができます

●質問に対するやり取りや詳しい現場の紹介なども

大きな拍手で締めくくられたトークセッションの後は、休憩を挟んで交流会に。テーブルごとに、美味しいスイーツを食べながら歓談が行われました。具体的な質問に対するやり取りがあったり、さらに詳しい現場の紹介がなされるなど、「この時間と空間を大切にしたい」という参加者の想いが伝わってくるものでした。

テレビや新聞などメディアによる
取材も多く見られました
近い距離で生の言葉が聞ける機会であり、
参加者にも好評でした


取材後記

この会を取材して、これから女性バス運転手の活躍がさらに増えることへの大きな期待を改めて感じました。テレビや新聞などマスコミ各社による取材も行われ、各方面から大きな関心が寄せられていることも実感でき、活発な情報交換がなされた意義は大きいと思います。今後もこのようなイベントや取り組みを続けることが業界のイノベーションにつながり、女性がますます活躍できる社会につながることを願います。


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日本初の「ろう者」のバス運転士がデビューし活躍中!

東京バスの松山建也さんが、聴覚障がいのある運転士として新たな道を開く

2017年12月8日。羽田空港リムジンバスの赤羽・王子⇔羽田線(東京バス㈱運行)で、松山建也さん(当時24歳)が、耳に障がいのある「ろう者」のバス運転士として路線デビューしました。2016年の4月に運転免許制度が改正され、ろう者でも補聴器を付けて一定の音が聞こえれば、バス運転士に必要な第二種運転免許の取得が可能に。これを取得した松山さんは、東京バス株式会社に就職。研修期間を経て、リムジンバスの乗務に就きました。
ろう者のバス運転士という新たな道を開いたパイオニア。そのご本人に、幼い頃からの憧れや、今までのご苦労、今後の目標などについてお話をうかがいました。

■ろう者として運転に携わる第一歩はトラックだった

●マイホームの夢を叶えるために運送業の仕事へ

松山さんは聴覚に障がいのある「ろう者」です。難聴には大きく分けて、「伝音性難聴」「感音性難聴」「混合性難聴」という3つの種類がありますが、松山さんは「感音性難聴」。補聴器を付けて生活しています。会話の声、エンジン音、救急車のサイレンなど、普段の生活で起こる音は聞こえていますが、会話の内容ははっきりとは聞こえにくく、声の判断が難しいタイプ。「タバコ」が「タマゴ」に聞こえるなど、間違った情報を受け取ってしまうことも多くなります。
そんな松山さんが運転の仕事を志したのは、「マイホームを持ちたい」という夢を叶えたかったから。マイカーでよく友達とツーリングしていた楽しかった思い出もあり、前職から運送業への転職を考えました。その時、家族からは心配され、反対もされたと言います。しかし「どうしても夢に向かって頑張りたい」と想いを伝え、トラックドライバーになったのです。

●実績が認められ、ろう者のトラックドライバーが増える

運送会社に入社した時、その会社にろう者は松山さんだけ。そうした中で、松山さんは4トンと10トンのトラックの運行実績を無事故・無違反で1年間重ねました。そこで会社は「ろう者でもしっかり運転できる」と認め、ろう者のトラックドライバーをおよそ10人にまで増やすきっかけになりました。運輸業界の人材不足問題の解決へと向かうためにも、たいへん重要な役割を果たしたのです。松山さんは運転技術や荷の積み降ろしを指導するなど、ろう者をまとめる役割も務めるようになりました。そして人の輪はさらに広がります。「取引先の幹部の人は、最初はろう者のドライバーに不安を持たれていましたが、実績で信頼を築き上げてきました。そして取引先の現場にも手話を自主的に覚えてくれる人が増えて、ろう者を理解してくれる店も増えてきました。うれしかったですね」と松山さんは語ります。

松山さんがバス運転士になるまで、日本ではろう者のバス運転士という実績はありませんでした

■バスの運転士になるのは小学生からの夢だった

●路線バスの運転士のハンドルさばきに憧れた

そんな松山さん、バスの運転士になるのは小学生の頃からの夢だったと言います。そのきっかけは何だったのかを尋ねてみました。「路線バスの運転士が、駅前のロータリーの路肩をギリギリまで寄せ、カーブに沿って曲がる時のハンドルさばきを見て、かっこいいなと思ったことがきっかけなんです。私もそんなふうに上手くハンドルを回して、お客様に喜んでもらえたらいいなと思いました」
そして幼い頃の憧れを、また強くした経験がありました。「バスの運転士への想いが強くなったのは、休日にマイクロバスを借りて東京から河口湖、富士山五合目、白馬村へと運転した時でした。同乗した友達みんなから『ありがとう』と言われ、うれしさとともに大きなやりがいを感じました」

●ろう者の子どもたちにもバス運転士への夢を持ってほしいという想い

そんな想いを抱いていた中で、2016年4月の運転免許制度改正で、ろう者でも補聴器を付けて一定の音が聞こえるなどの条件を満たせば、第二種運転免許が取得できるようになりました。タクシーやバス運転士への道が開かれたのです。この時のことについて、松山さんはこう語ります。「私は、バス運転士になるという目標が新たにできたことをうれしく思いました。私だけではなく、多くの難聴者やろう者にとって、大きな喜びだったと思います。私は道路交通法の改正に関わった方々に感謝し、バス運転士をめざそうと決意しました。もちろんトラックの運転もバスの運転も、いずれも同様に大切な仕事です。ただ、バスの運転士は荷物ではなく人を運ぶので、私は乗り心地の良いサービスでお客様を安全に目的地へお連れする任務を果たしたいと思いました。また、先駆者としてろう者のバス運転士の実例をつくり、ろう者の子どもたちがバス運転士への夢を持つことで、明るい気持ちで生活を送ってほしいと思ったのです」

 

バス車内のネームプレート
取材は東京バスの北区・滝野川の本社で行われました

■ろう者で初めての運転士として東京バスに入社

●コミュニケーションの問題が壁として立ちはだかる

自分の夢に向かって進もうと決意した松山さんでしたが、大きな苦労もありました。「私は口話では上手く話せません。そのためコミュニケーションがいつも大きな壁として立ちはだかっています。バス業界に転職しようと活動した時も、そう感じました。ろう者を受け入れた経験のない会社では、どのようにろう者と仕事を進めたらよいか戸惑うでしょう。ろう者への知識がないため、予想できないことに対する不安を持つ方も多いと思います。その対策としては、私からどうコミュニケーションを取って仕事を進めていくかを提案する必要がありました」
多くのろう者はオフィスや工場、店舗などを中心に働いていますが、ドライバーという職種についてはインターネットでも情報が少なく、松山さんは情報収集に苦労したと言います。それでもトラック業界の実例を参考にし、バス業界については台湾、アメリカ、ヨーロッパなど、外国のケースを参考にしながら勉強。また、自分なりのコミュニケーションツールを考え、LINEでのやり取りや音声認識ソフトの導入などを面接時に提案したそうです。しかし、運転時には使えないことや、予期しなかった問題を指摘されるなど、確かな安全性を担保するには難しいことも分かったと言います。

●「熱意を大切に、夢に向かおう」という会社側の大きな決断

それでも屈することなく転職活動を続けた松山さんは、東京バス株式会社への入社を希望します。会社に対する印象は、「3社のメーカーのバスがあり、新しいバスが多いのが印象的でした。また、貸切バス事業者安全性評価認定制度の3つ星を取得し、安全対策をしっかりと行っている会社だと感じました」とのことでした。
そして2017年10月1日、東京バスに入社。松山さんの採用における会社の考え方を、運行管理部・教官の久保田健治さんにうかがいました。「社長、本部長、運行管理部の課長が面接を行いましたが、当初、コミュニケーションの問題なども考えると、採用するのは難しいと判断されていました。しかし、松山さんの情熱と努力にふれた社長の『彼の熱意を無にしてはいけない。それに彼は堂々と国家資格の免許を取得しているのだ。夢を叶えてあげたいから、みんなで協力してほしい』という決断で、採用に至ったのです」
入社後は約2ヵ月の研修を積みました。「運転研修では、筆談器を使ってルートや右左折するタイミングなどを教えてもらいました。2人の同期生とも協力し合いながら研修を受けられて良かったと思います」と松山さんは語ります。

松山さんと取材に応じてくださった、東京バス株式会社 運行管理部・教官の久保田健治さん(右)

■さまざまな工夫とサポートで円滑な業務の推進へ

●羽田空港リムジンバス・赤羽・王子⇔羽田線の運転でデビュー

そして松山さんは2017年12月8日、羽田空港リムジンバス・赤羽・王子⇔羽田線の運転でデビューしました。「その時は緊張もあり、笑顔で接客できなかった面もありましたが、現在では笑顔で対応できるようになったと思います。お客様からたびたび応援の声もいただくので、たいへんうれしく思っています」
この路線を担当したことについて、久保田さんにもうかがいました。「羽田空港リムジンバスには、共同運行する3社のバス会社で定めた料金箱のシステムがあり、現金を扱います。ですから、お客様とのコミュニケーションの必要性があります。そこで、いきなり松山さん一人という訳にはいきませんから、車掌を同乗させてサポートしています。しかし、いつまでも車掌を付けた運行をするという訳にはいきませんから、今後は二人で交代しながら運転する東京・大阪間の高速バスの運転にステップアップしようかと話しているところです。また、観光バスのガイドさんとのペアということも考えています。いずれにしても、安全・安心を守り、お客様にご不安を与えないことが私たちの使命です。そんな私たちの一員として、松山さんも毎日一生懸命に頑張っています」

●東京バスの社員旅行でも運転を担当し評価される

12月12日・13日に行われた東京バスの湯河原などへの社員旅行では、初めて貸切業務で運転を担当しました。この時のことを久保田さんは「松山さんの運転を体感してみたいという社員の声もあり、社員旅行で運転してもらうことにしました」と言います。松山さんは、「移動中、社員の人たちが手話本で簡単な手話を覚えて、バスを乗降するたびに『ありがとう』『よろしくお願いします』『お疲れ様です』と手話で伝えていただけたのはうれしかったです。また、スムーズなアクセルワークを行うことができて、先輩方から褒めていただいて一安心しました」とうれしそうに語られました。

●安全第一の運転で、快適な時間を提供したい

現在は週に3日ほど運転業務を行い、それ以外の日は本社での業務や他ルートにおけるガイド研修などに従事。運転業務の際には、お客様とのコミュニケーションも大切にし、数々の工夫も行っています。「降車される場所の案内カードを用意したり、料金受けの時に手で2や3など数字を表して、『2人ですか?』『3人ですか?』とお客様に声をかけています」。松山さんの運転はお客様からの評判も良く、「バスの運転を始めたばかりなのに上手ですね」「寝ていたらもう着いていてビックリしました」などの声をいただいたこともあるそうです。
仕事で大切にしていることを尋ねたところ、「もちろん安全を第一に、道路上で何が起こっても落ち着いて運転しています。また、アクセルワークを大切に、乗り心地の良い運転をすることで、お客様が快適に過ごせるよう常に心がけています」とのことでした。

必要な情報が記されたカードを手作りし、お客様や車掌とコミュニケーションを取っています

■「できないでしょ」の概念を脱却しながら明日へ向かう

ろう者のバス運転士となった
松山さんのことは、NHKの「手話
ニュース」などでも伝えられました

●障がいに関係なく交流しながら楽しめるツアーもめざしたい

松山さんはこれからも実績を積んで、世間にろう者の運転士でも大丈夫であることをアピールしながら、多くのお客様に安心して乗車いただけるように努力していきたいと言います。「1973年までは、ろう者は自動車の運転を禁じられていました。その状況を変えるための運動があり、運転免許が取得できるように改革。最初は乗用車のみの範囲だったのがバイクやトラックも運転できるように変わり、さらにこうして第二種も取得できるようになりました。ろう者に対するネガティブな思考、『できないでしょ』という概念を捨てて、一歩前に進む。その中で私もさらに努力を続けますし、助け合いながらみんなで仕事を楽しめる環境ができたらいいなと思います。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本にもろう者のバス運転士が存在することをアピールするとともに、国内外のろう者が日本の観光スポット巡りを楽しめるツアーなどができるといいですね。また、障がいに関係なく交流しながら楽しめるツアーもめざしていきたいです」


取材後記

取材を通して松山さんの人間性にふれ、仕事にかける情熱と、常に工夫・改善する姿勢、さらにはコミュニケーションの柔軟性を感じました。そして、ろう者の運転士をサポートし、明日を開こうとする東京バスの企業努力を伝えていただき、交通の未来はみんなで模索しながら創り出していくものだと改めて感じさせられました。
松山さんはバスの運転士になった今、家族や友達、多くのろう者からも「ぜひ頑張ってほしい」と応援してもらっているとのこと。そのバスは、多くの人々とともに、多くの人々の夢をも乗せているのでしょう。「ろう者でも好きな仕事に就く機会がもっと増えて、幸せな人が増えるといいですね」と語る笑顔がとても印象的でした。


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さらなるバスの進化へ!『第45回東京モーターショー2017』

新時代のモビリティと、さらなるバスの進化!『第45回東京モーターショー2017』開催!

2017年10月27日〜11月5日、江東区・有明の東京ビッグサイトで『第45回東京モーターショー2017』が開催されました。そのテーマは「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」。隔年開催の今年は、業界の垣根を超えて世界最先端のモビリティの価値が集結し、海外メーカー13社を含む153社・団体が出展しました。最先端のバスにも注目が集まり、新型バスに乗るために列をつくる来場者たちで、大きなにぎわいとなっていました。
新時代のクルマが暮らしとどう関わるかに注目が集まる中、さらに進化したバスが未来へどう向かうのか、そのレポートをお伝えします。

■ドライバーとユーザーのためにできることが満載

●いすゞ自動車の「エルガ」はさらなる環境品質へ

まずは、いすゞ自動車のブースへ。「運ぶの時代に、できること。」という出展テーマで、未来の「運ぶ」を支える取り組みが紹介されていました。出展された大型路線バス「エルガ」について、いすゞ自動車販売株式会社の藤井勇一郎さんにお話をうかがいました。「この『エルガ』は、9月から市場に投入しているものです。国土交通省が定めるノンステップバス認定仕様に準拠したモデルで、前向きの優先席にしたり、通路幅を拡張したりするなどの取り組みを行っています。エンジンは6気筒から4気筒にダウンサイジングし、排出ガス後処理装置の更なる性能向上とともに、ヨーロッパの「ユーロ6」よりも厳しい排出ガス規制を満たしています。それとともにトランスミッションではAMT(自動クラッチマニュアルトランスミッション)も導入し、さらなる燃費向上をはかっています」

バリアフリーやユニバーサルデザインにも配慮した大型路線バス「エルガ」

お話をうかがった、
いすゞ自動車販売株式会社の藤井勇一郎さん
いすゞの出展テーマである「運ぶの時代に、できること。」が、
「エルガ」にもあしらわれていました

●運転環境の改善でドライバーをサポート

藤井さんに、さらに「エルガ」の運転席など、新しくなった部分についてうかがいました。「AMT(機械式自動変速マニュアルトランンミッション)操作レバーのカバーを小さくしたり、運賃箱の位置を見直すなど、細かな工夫によって運転席のスペースを若干広げて運転環境を改善しています。また、お客様の座席では一部足乗せ台の見直しも行い、膝前を広げて居住性を確保しました。それに、このモデルからヘッドランプにLEDランプを採用して、視認性の高さに加え、ロングライフ化を実現しました。」

 

バリアフリー・ユニバーサルデザインで、
通路幅の広さも特徴です
細かな改善を重ねて、ドライバーの居住性・快適性にも
配慮しています

LEDヘッドランプの採用によって、夜間の視認性も
向上しました
車いすの固定装置や、ベビーカーを固定できる
フリースペースも

●ユーザー視点の優しさのあるスロープ

利便性の高まった中扉のスロープについてもうかがいました。「スロープ板は折り畳みの反転式で、素材も軽くなり、ほんの5秒もあればセットできます。スムーズに利用できてお客様をお待たせすることもありませんから、車いすやベビーカーを使われる方にとっても、うれしい仕様だと思います」と藤井さん。ユーザー視点の優しさが盛り込まれた新しいバスは、モーターショーに訪れたお客様にも大人気で、何度も乗ってみるお子さんたちの姿も見られました。

軽量素材の採用によって、乗降がますます
スムーズになっています
スロープが折り畳まれた状態から、乗務員が簡単に
引き出すことができます

●ハイブリッド連節バスの開発も着々と進行

最後に、未来のバスの姿についてもうかがいました。「現在、日野自動車さんと共同で、国産初のハイブリッド連節バスの開発に取り組んでいます。生産はジェイ・バスさんで、2019年頃の市場投入を目指しています。一度にたくさんのお客様を運べるようになるため、混雑の解消などにも貢献できます」まさに未来の「運ぶ」を新しくする、これからのワクワクする取り組みに期待もふくらみます。

コンパニオンのお姉さんが受付でバスのモデルを紹介
未来の連節バスの紹介は「ぬり絵」になっていて、
お子さんが楽しく好きな色を塗れるようになっていました

■すでに地域で活躍しているEVバスの姿

●たくさんの子どもたちも参加した楽しいイベント

続いて、日野自動車のブースを訪問。「もっと、はたらくトラック・バス」をテーマに、未来の交通がいきいきと見えてくるような楽しい紹介がされていました。ブースの各所には、子どもたちが自由に描いた、未来に働くバスやトラックの絵を展示。そして大画面モニターでは、描かれたクルマたちが未来の街を走っている様子が映し出されていました。

子どもたちが描いたトラックやバスは、大画面モニターの中で
未来の街を楽しそうに走っています
「未来のトラック・バスを描いてみよう!」のテーマで
子どもたちが描いた色とりどりのクルマが展示されていました

「日野ポンチョEV」をはじめ、
「日野メルファ プラグインハイブリッド」
「燃料電池自動車」についても、
モニターで分かりやすく
紹介されていました

●地域に親しまれている「日野ポンチョEV」

「EVシフト」の波が押し寄せている時代ですが、日野自動車のブースに展示されていたのは、小型ノンステップ電気バスの「日野ポンチョEV」。かわいいデザインでおなじみの「日野ポンチョ」をEV化したもので、2012年から既に実用化。地域の人々の移動を支えるコミュニティバスとして活躍しています。東京都羽村市では羽村市役所を中心に、はむらでんきバス「はむらん」が運行。東京都墨田区では東京スカイツリーを中心に「すみりんちゃん」が運行。そして石川県の小松市では「宇宙バスこまち☆」が運行し、多くの人に親しまれています。

かわいいデザインの車体が目を惹く、小型ノンステップ電気バス「日野ポンチョEV」

●EVならではの乗り心地をお客様に提供

さらに、日野自動車株式会社の飯島真琴さんに「日野ポンチョEV」についてお話をうかがいました。「すでに3ヵ所で営業運行している電気自動車のバスです。エンジンのない走りはとても静かでスムーズですから、お客様にもご好評いただいていると聞いています。もちろん走行中に二酸化炭素を発生しないなど、環境への優しさも大きなポイントだと思います。コミュニティバスとして親しんでいただいていますから、その地域に合わせた色やデザインにも注目していただけたらうれしいですね。現在は実績を生かしながら、さらなる改善・開発に取り組んでいます」とのことでした。

 

乗車定員は36名で座席は11席。
小型ですが車内はかなり広々としています
後ろから見た姿もかわいい「日野ポンチョEV」。
バッテリーは約30kWhのリチウムイオンです

■未来を照らし出す! 頼れる大型観光バス

三菱ふそうトラック・バス株式会社の
品田善之さん

●運転への負担を軽減する新型「エアロクィーン」

そして、三菱ふそうのブースへ。「LIGHT UP TOMORROW」という出展テーマのもと、光の演出が美しい印象的な空間が創造されていました。ここでは約10年ぶりに大きな進化を果たしたという大型観光バス「エアロクィーン」が、その流麗なスタイリングとともに登場。ライティングの効果によって、より幻想的な姿を現していました。
新しい「エアロクィーン」について、三菱ふそうトラック・バス株式会社の品田善之さんにお話をうかがいました。「今年の5月に発売しましたが、今回のモデルから8段機械式AMTの『ShiftPilot』を全車に標準装備し、運転にかかる負担を大きく軽減しています。これによって、さらなる安全運転を追求しました。安全機能が大きく進化し、衝突被害軽減ブレーキ『ABA3(アクティブ・ブレーキ・アシスト3)』や、運転手の注意力低下を警告する『アクティブ・アテンション・アシスト』などを搭載しています」

三菱ふそうの主力となる大型観光バス「エアロクィーン」

●ウィンドウにもさまざまな工夫を実現

さらに「エアロクィーン」のデザインについてもうかがいました。「サイドウィンドウがサッシュレスになっているため、見た感じもスッキリして、開放感が増大しています。また、リアウィンドウに後面シグネチャーライトを採用し、スタイリッシュさを加えるとともに、後方からの視認性を高め安全性も向上しました」と品田さん。暮らしの明日、物流業界の明日を照らす「LIGHT UP TOMORROW」の取り組みが、ブース全体から感じられました。

リアウィンドウの放物線の枠に
後面シグネチャーライトを採用しています
観光バスの新たなベンチマークをめざした
新型「エアロクィーン」

先進性を感じさせる「エアロクィーン」の紹介パネル

●興奮と感動のVR体験でイベントをショーアップ

「エアロクィーン」に乗車してVRを体験できるコーナーには、長蛇の列ができていました。「光とドライブ感がすごい、素晴らしいVRでした」との声もあり、「LIGHT UP TOMORROW」のコンセプトと連動し工夫を凝らした「FUSO Future TOKYO Experience」のVRコンテンツに、多くのお客様が満足されていたようです。

ミニシアターと化した「エアロクィーン」のVR体験コーナーには長蛇の列ができていました


取材後記

今回のモーターショーでは、進化するバスのさまざまな姿が見られました。EV化、連節バス、そしてより進んだ安全性への取り組みなど。まさに全体のテーマである「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」の躍動感が、バスの世界でも感じられました。そして、見た目だけではない地道な努力を積み重ねることによって未来が開かれることを、改めて確認しました。バスに乗る人、そして運転する人へのサポートが、笑顔の未来につながっていくことは言うまでもありません。各社の継続した取り組みに、今後も大きな期待が寄せられます。


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100年間の感謝を込めて!「奈良のバス100周年記念フェスタ」開催

100年間の感謝を込めて!「奈良のバス100周年記念フェスタ」開催

2017年5月27日・28日の二日間、奈良交通主催の「奈良のバス100周年記念フェスタ」が奈良県宇陀市の「道の駅 宇陀路大宇陀」および「宇陀市文化会館」で行われました。

2017年5月27日・28日の二日間、奈良交通主催の「奈良のバス100周年記念フェスタ」が奈良県宇陀市の「道の駅 宇陀路大宇陀」および「宇陀市文化会館」で行われました。
奈良県におけるバスは、1917年(大正6)5月25日、宇陀郡松山町(現在の宇陀市大宇陀)の松山自動車商会により、松山・桜井駅間を6人乗りのT型フォード車が走ったのが始まりで、今年は運行を開始してから100周年を迎えることから、これを記念して奈良県バス発祥の地大宇陀でイベントが開催されたものです。当日は天気にも恵まれ、多くの来場者で賑わいました。

 

くす玉割りに続いてボンネットバス試乗会がスタート
記念式典で挨拶をする奈良交通 植田良壽社長

■名物車掌がご案内!宇陀の街並みを走るボンネットバス試乗会!

●奈良交通にも1台しかない貴重なボンネットバス

昭和30年代から40年代に路線バスの主力として活躍していたボンネットバスも、時代とともに数が少なくなってきています。奈良交通が所有するボンネットバスは1966年式のもので、今でも元気に走ることができます。イベント当日も事前に申込みをされた参加者を乗せ、江戸時代から続く古い建物が多く残り重要伝統的建造物群保存地区にも選定された宇陀市松山地区を走る試乗会が実施されました。案内役として、昔この路線をボンネットバスで運転していた経験のある社員の方が車掌として乗務され、当時の様子をおもしろおかしく案内して、試乗会の参加者は大満足の様子でした。

試乗会に出発するボンネットバス 大勢のギャラリーが見送りました

■奈良県におけるバスの歴史を振り返る「バスの歴史写真パネル」展示と「記念映像」の放映!

●「記念映像」は奈良交通のホームページでも

道の駅2階の会議室では、奈良交通が所有するバスの歴史写真パネルを展示。運行開始当時の松山・桜井間を走るT型フォード車など貴重な写真をたくさん見ることができました。また、このイベントにあわせて作成された記念映像「タイムトラベル 奈良県バス100年の旅」は、昔の写真や映像を使用し、より詳しく奈良県におけるバスの歴史を知ることができるようになっています。
なお、この記念映像は奈良交通のホームページでも公開されていますので、ぜひご覧ください。

パネル展示や記念映像を見る来場者 その横ではバス・電車のジオラマ展示も行われました

■この機会にしか見ることができない珍しい車両を展示!

●貴重な車両やちびっこに大人気の車両が大集合

車両展示ゾーンでは、T型フォード車の後継車で、奈良県内でも乗合バスとして運用されていたA型フォード車(1929年式)やジェイ・バス所有のボンネットバス(1960年式)、また奈良県桜井警察署の協力によりパトカーや白バイが大集合。さらには高齢者や身体の不自由な方が利用しやすい回転シートが搭載された介護タクシーが展示されました。
昔なつかしい車両や珍しい車両の展示に多くの方が周囲を取り囲み、とくにちびっこにはバス運転者の帽子や制服を着てバスの前や運転席で撮る「子ども制服写真撮影会」が大人気。また白バイやパトカーにも警察の制服を着て乗ることができ、みんな写真を撮るポーズも格好良く決まっていました。

 

制服を着て「はい、ポーズ!」
ボンネットバスやA型フォード車など珍しい車両が展示されました

■バスの車庫はどうなっているの?洗車機や点検ピットを体験!

●普段は見ることができない設備に大人も子どもも興味津々!

こちらも事前申込みが必要でしたが、イベント会場からバスの車庫に移動して実施されたバスの洗車体験&子ども安全教室にもたくさんの参加者が集まりました。
バスに乗った状態で洗車機の中を通ったり、実際にバスを点検するピットにもぐってみたりする体験会はちびっこに大人気。一緒に付き添っているお父さん、お母さんも初めての体験とあって興味深くあちこち見て回っていました。また、子ども安全教室では、実際に運転席に座ってバスの死角や風船を使ってバスのタイヤの動き方(内輪差)を確認するなど、交通安全の重要性を理解してもらうとともに、親子でバスに親しむ良い機会となりました。

普段は見ることができないバスの車庫の様子に興味深々
運転席から外はどう見えるかな?

■チビッコに大人気!オリジナルヒーローショーやアイドルユニット、ゆるキャラグリーティングに郷土芸能など多彩なステージ!

●ステージイベントのテーマは地元密着

地元中学校の吹奏楽演奏に始まり、奈良交通社員有志によるお笑いやオリジナルヒーローショー、アイドルユニットなどステージイベントは歌あり、笑いあり、踊りありと広いステージが狭く感じるほどの熱気で大盛り上がり。圧巻は宇陀和太鼓連盟による和太鼓の演奏。大迫力の演奏に拍手が鳴りやみませんでした。そのほかにもウクレレやバンド演奏、ゆるキャラグリーティングなど切れ目なく続くステージの演目に来場者は大満足の様子でした。

ちびっこに大人気 ゆるキャラ大集合!
迫力ある和太鼓の演奏

■100周年記念乗車券やオリジナルグッズを販売!

●運行開始当時の松山自動車商会の乗車券を再現!

物販・飲食ゾーンでは、100周年記念乗車券や100周年オリジナルグッズの販売が行われました。記念乗車券は松山自動車商会が運行した当時の乗車券を再現。パッケージにも運行当時のバス(T型フォード車)の写真を配置し、中面はバスの変遷や宇陀の風景写真が楽しめるようなデザインとなっています。
オリジナルグッズも100周年記念ということで充実。バス型ペーパークラフト(T型フォード車、ボンネットバス、路線バス、観光バスの4種類をセット)や奈良交通オリジナルキャラクター「シーカくん」のかわいらしいポールチェーン付ぬいぐるみが販売され、ご家族づれやちいさなお子さんに人気となっていました。また、道の駅売店では奈良県で最初のバス会社である松山自動車商会
を設立した久保本家酒造の日本酒を、T型フォード車を描いたオリジナルラベルとボンネットバスをデザインした箱に入れて販売。お酒好きにはたまらない一品となっています。
なお、記念乗車券は今後、奈良交通の案内窓口での販売のほか、通信販売でも販売する購入可能とのこと。数量限定のため早めのお買い求めがおすすめです。
詳しくは奈良交通ホームページ(http://www.narakotsu.co.jp/news/news_0754.html
をご覧ください。

来場者で賑わう物販・飲食ゾーン

100周年記念乗車券(緑・赤の2種類)松山自動車商会当時の乗車券を再現している

ペーパークラフト(右からT型フォード車、ボンネットバス、路線バス、観光バスの4種類)

 

オリジナルラベル付の日本酒(720ml)
T型フォード車の写真が入ったオリジナルラベルと
ボンネットバスをデザインした箱が特徴的
奈良交通のマスコットキャラクター
「シーカくん」ぬいぐるみ(高さ15㎝)


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快適さも追求!『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』第二部開催!

快適さも追求!『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』第二部開催!

2017年2月12日。東京バス協会主催の「第1回バスドライバー安全運転コンテスト」第二部「高速路線バス、空港連絡バス、貸切バス部門」が、府中運転免許試験場で行われました。一般路線バスとは異なり、安全・安心だけでなく、さらに「バスの快適さ」が評価のポイントに加わり、さらに熱い想いを込めたコンテストとなりました。

写真は、中央が個人総合優勝の小松さん(東京空港交通)、左が同準優勝の町井さん(平成エンタープライズ)、右が同3位の田中さん(平成エンタープライズ)。

「第1回バスドライバー安全運転コンテスト」第二部の関係者・参加者の記念写真。

■より安全・安心なバス運行のためのコンテスト!いよいよ第二部開催!

●『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』第二部

東京バス協会主催の『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』は、2016年10月9日(日)に開催された第一部「一般路線バス部門」につづき、第二部「高速路線バス、空港連絡バス、貸切バス部門」が、2017年2月12日(日)に開催されました。
今回は、関連事業者5000名のドライバーの中から選び抜かれた精鋭25名によって、熱のこもったコンテストが繰り広げられました。

東京バス協会常務理事・市橋さん

●主催者インタビュー・東京バス協会常務理事・市橋さん

東京バス協会の市橋さんに、第一部に引き続き、第二部開催の目的や意義について、お話を伺いました。

●高速バスの運行に求められるもの

高速バスは、一般道と高速道の両方を走らなければならないということで『安全な速度の保ち方』がより難しくなってきます。
第一部では『Gセンサー(=ブレーキをかけたときにかかるGの負荷を測定する器具)』はありませんでしたが、それに代わるものとして『高齢者疑似体験セット』を装着したお客様に乗っていただいて、車内事故防止に対応する内容を取り入れました。
第二部では、Gセンサーを取り入れある程度の速さ、50kmくらいまで速度をあげて、いかにスムーズに、安定してバスを止められるか。乗っているお客さまの不安をかきたてるものになっていないか、ということが審査の対象となります 。
安全であることはもちろん、高速バスには求められているのは、さらなる「安心感」や「快適さ」なのでしょう。

●安全運転のプロフェッショナルに求められる姿勢

第一部とはっきり違うのは、高速道路を走るバスなので全座席シートベルト着用の義務を負っている点です。『平場を走るのだから、シートベルトはいらないんじゃないか?』というような質問をさせて、それに対して参加者がどう答えるのか。『全座席着用が義務化されていますから平場でも着けてください』というような回答をすればいいし、それができなければ減点となってしまいます。
高速バスの安全走行に関しては、東京バス協会の会員企業のドライバーの技術は、かなり高いと思います。軽井沢の事故からちょうど1年になりますが、運転技術の高いドライバーに集まってもらって、その技術を大いにアピールしてもらおうということです。
安全運転のプロフェッショナルに求められるスキルは、運転技術だけではなく、常に「安全・安心」を求めるその姿勢であることは明らかです。

 

■『第1回バスドライバー安全運転コンテスト』第二部の表彰式

●第二部「高速路線バス、空港連絡バス、貸切バス部門」の団体総合、個人総合、個人各コースの受賞者が決定!

「第1回バスドライバー安全運転コンテスト」の第二部「高速路線バス、空港連絡バス、貸切バス部門」の受賞者が、下記の通り決定しました。

【一般路線バス部門:団体総合】

●団体総合優勝:平成エンタープライズ(田中信一さん、町井武史さん)
●団体総合準優勝:ジェイアールバス関東(西沢祐志さん、栗田光広さん)

団体総合準優勝のジェイアールバス関東
団体総合優勝の平成エンタープライズ

【一般路線バス部門:個人コース別】

●個人基本Aコース優勝:嵯峨竹男さん(神奈中観光)
●個人基本Bコース優勝:嵯峨竹男さん(神奈中観光)
●個人技術コース優勝:加藤泰さん(桜交通)

技術コース優勝の加藤さん(桜交通)
基本Aコース・Bコース優勝の嵯峨さん(神奈中観光)

【一般路線バス部門:個人総合】

●個人総合優勝:小松浩之さん(東京空港交通)
●個人総合準優勝:町井武史さん(平成エンタープライズ)
●個人総合第三位:田中信一さん(平成エンタープライズ)

写真中央左から、町井さん(平成エンタープライズ)、小松さん(東京空港交通)、田中さん(平成エンタープライズ)

左から、平成エンタープライズの
田中さん、田倉社長、町井さん

●受賞者インタビュー・
・団体総合優勝・平成エンタープライズ・田倉社長

団体総合優勝・平成エンタープライズの田倉社長、町井さん、田中さんに、受賞の喜びをお伺いしました。

田倉社長
今回の出場者は、所長が選出したメンバーから、さらに副社長が選びました。
コンテストへの出場が決まってから、運転士どうしが集まって「たこつぼ」を作って練習したり、各営業所ごとに、コンテストの有無にかかわらず常に練習を行っていたということがあります。
また、2年ほど前には、茨城県の自動車安全センターで、一泊二日、二泊三日で、バスの特性(クセなど)を理解するための技能研修を実施しました。結果がよかったのは、このようなことを、常に行っていた結果であると思います。

町井さん
入社して14年ですが、結果を出せたのは「初心忘るべからず」です。コンテストの出場が決まってからは、少し強めに練習をしていました。一番難しかったのは「たこつぼ」です。前日まで練習を重ねていました。

田中さん
入社して2年ですが、他社の夜行バスの経歴も含めると6年になります。今回難しかったのは、G測定のところです。基本的に普段は安全運転でゆっくり走っているので、50キロ出して、急に止まるということもあまりありませんでしたので。

東京空港交通の増井社長
東京空港交通の小松さん

●受賞者インタビュー・東京空港交通・増井社長、小松さん

東京空港交通の増井社長、個人総合優勝・小松さんの受賞インタビューです。

増井社長
彼(小松さん)は指導員乗務員として模範を示す立場にあり、チームをまとめていく力を持っています。選ばれた理由も、彼が指導乗務員という立場だったからということです。今回のコンテストに2人出ていますが、全体の力が結集され日頃の積み重ねの結果だと思います。
安全を最優先に、最高のお客さまサービスをモットーに、日々研鑽を積み重ねるということに尽きると思いますが、デメリットが少なかったということで、我々の仕事はデメリットをいかに少なくしていくかといことが大切です。団体でも3位ということでしたので、チーム力としてもあるということはありがたいと思います。今回この表彰は重いと思っているので、それを彼はまた社内に広げてくれるんだろうと期待しています。

小松さん
通常の仕事をこなしながら、指導乗務員も務めていますが、まだ半年ほどです。その指導乗務員の中でも社歴が一番浅い方なので、大先輩に対しても意見を言わなければならないのが少し辛いところです。
定期的に指導乗務員会議を年間不定期で4回ほど開催していますが、各指導乗務員が、社員の現状の聞き取りを行い、それを会議にあげて会社に相談に乗っていただくというものです」このような日々の積み重ねが、増井社長のいう「チーム力」につながっているようです。

一番難しかったのは、切り返しだそうです。
植え込みがあるため切り返しが必要で、1回切り返しまでは減点しないという条件ですが、その1回をどこで使うのかの正解がわからない中で、ずっと悩んでいました。皆さん3回ほど下見ということでコースを見られますが、それもできなかったので、今日本番ではじめてクリアでき、時間はかかったのですが、慎重にやりました。
新入社員は訓練生として教官について2ヶ月半くらい研修を受けます。
14年前の入社当時、技術的なことや、高速路線を実車で覚えるなど、ちょうどその課程に入ったときに、「たこつぼ」の訓練がありました。その教官が素晴らしい方で、決して答えを教えてくれない、自分たちで考えないとできないから、ということでした。
「たこつぼ」は3回切り返しくらいで、当時は出られましたので、そのイメージを今回も思い出しながらやってみましたが、その教官に相談に行ったところ、あれは一辺8mの枠で、今回は12mだから、全然やり方が違う、ということでした。ほとんど距離がないので、バスが思った通り動いてくれません。今回設定として、A・Bコースは「ジェイ・バス」でしたが、「たこつぼ」は「三菱ふそう」でハンドルの切れ方がまるっきり切れないので、より難しいのです。

■バスの「快適さ」の評価も加味した、コンテストの難コースを紹介!

●基本コースA:旅客想定・安定走行部門

基本コースAは、今回、最も第二部の特徴をとらえたコースとなりました。「旅客想定・安定走行=お客様の安全・安心・快適のために、どれだけ安定した走行を追求できるのか」が大きなテーマです。ここで最初に登場するのが「Gセンサー計測」。40km加速と50km加速で、ゴール地点で停止してGセンサーの計測バーの倒れ具合から、Gの負荷の大きさを計測します。緊張感あふれる車内に、Gセンサーのバーの倒れる音が響き渡ると、参加者ならずとも、ドキリとします。
その他、スタート地点での、シートベルト装着の呼びかけなど、安全への配慮についても、チェックされます。坂道発進、S字コースは、前回と同様の試験となります。

 

(B)直線コース②
速度0からスタートし、50km/hまで加速、ゴールで停止
(A)直線コース①
速度0からスタートし、40km/hまで加速、ゴールで停止

(D)S字コース
縁石の接触等による減点、タイム計測を実施
(C)坂道発進
坂の途中で一旦停止後d、発進20cm以上後退で減点

東京空港交通・伊東運行部長(執行役員)
マルチGセンサー

●マルチGセンサーの提供事業者・東京空港交通・伊東執行役員

今回のコンテストの基本Aコースで使用された「マルチGセンサー」について、機材提供者にお話をお伺いしました。

今回機材提供しましたマルチGセンサーは、もともとトラック等の研修所で使われていたものを、社内で改良したものです。倒れるのが一方向だったのを、前後左右方向に倒れるようにし、あわせて複数のG値に対応できるよう改良しました。平成21年の中央技術委員会全国大会でも構造や寸法早見表など入れ発表させていただきました。

最近はドラレコなどでG値の解析はできますが、今回のようなコンテストで解析装置などを入れると大変なことになり、なんといっても手軽に使えて、急制動、急加速、急ハンドルなどの操作がリアルタイムで反映され、すぐにパタンと倒れるので視覚的にもわかりやすいかと思います。実は、ドラレコと比べても、意外とその数値は近いんです。こんなかたちでお役に立つとは思いませんでした。

●基本コースB:基本運転部門

基本コースBは、基本運転部門といっても、結果的には難易度の高いコースとなりました。特に、参加者がはまったのが車長ギリギリの中での「方向転換」。縁石への接触2回以上は減点という厳しさで、慎重な運転を余儀なくされて、かなり時間がとられたようです。その他、「隘路」や「縦列駐車」など、日常の運行業務を想定した試験競技もありました。

 

(B)方向転換
右後退左前進・左後退右前進各1回、切り返し1回、接触減点
(A)隘路(枠内前進駐車)
3×14mの枠内に右、左旋回で駐車。ラインはみ出し減点

(C)縦列駐車
14m×3.2mの枠内に縦列駐車、タイム計測を実施

●技術コース:難易度高のパイロンスラローム、たこつぼ!

技術コースは、難易度の高いパイロンスラローム、たこつぼ切返しを実施します。プロの運転士にとっても、かなりの難関ですが、今回はさらに車体の長さのために、思ったように動けない、ということが多く見られました。

 

(B)狭隘箇所方向転換(たこつぼ切返し)
切返し制限なし、7分経過で打ち切り、タイム計測を実施
(A)パイロンスラローム
5分経過で打ち切り、接触等減点、タイム計測を実施


編集後記

待ちに待った第二部の開催。こちらでも、安全・安心のために熱く競い合う、皆さんの力強い姿がみられました。今回も「安全」という最重要キーワードはもちろん、「安心感」や「快適さ」など、単なる「移動手段」としての乗り物ではなく、私たちの暮らしに息づく交通機関としてバスに求められるキーワードを、強く感じたコンテストでした。見学で同乗させていただいた審査中のバスでは、Gセンサーがパタパタと倒れるたびに、静まり返った車内に、一瞬はりつめたような緊張感が走り、コンテストの参加者と一緒になってドキドキしました。東京バス協会常務の市橋さんのインタビューにもありましたが、このコンテストの参加者の皆さんは、優れた運転技術を持ち合わせた方々の代表者です。これからも、この優れた力を、ぜひ社会のために活かしていただければと思います。


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動く高級ホテル!? 業界初!完全個室型高速バスが登場!

動く高級ホテル!? 業界初!完全個室型高速バスが登場!

2017年1月18日、業界初の完全個室型の夜行高速バス『DREAM SLEEPER』が、東京−大阪間で運行を開始しました。高額といわれる料金設定ながら、週末の予約は満杯。移動の快適さと時間の有効活用を実現する、メディアの注目度も高いこの豪華バスについて、関東バスの丸山営業所を取材しました。

写真は左から、関東バス・経営管理室長の久永さん、同社丸山営業所・副所長の石場さん、同営業所・所長の秋葉さん、経営管理室主任の大田さん。

■動く高級ホテル? 業界初の完全個室型『DREAM SLEEPER』に集まる期待

業界初の完全個室型の車内
車両の開発は両備ホールディングスが担当

高速夜行バスのこれまでの印象は「金額は安いが長時間で疲れやすい」というイメージがどちらかといえば強かったかもしれません。しかし、快適さを追求したさまざまな車両の登場で、「快適さ」「豪華さ」が高速バスのトレンドとなりつつあります。
その中でも、いまメディアの注目が高いのが業界初「完全個室型」の『DREAM SLEEPER』。NHK、民放キー局のテレビのほか、朝日新聞など大手メディアに数多く取り上げられています。
1月15日現在までのwebの掲載だけで976件。1月末までのテレビは、ブラジル、韓国からのテレビ取材を含めて20件。2月2日までの新聞記事掲載は、57件とすさまじい勢いでした。
運行開始のきっかけについて、「もともと両備ホールディングスさんと倉敷行きバスを共同で運行していたのがご縁で、両備ホールディングスさんの方から声をかけていただきました」と語るのは関東バス・経営管理室長の久永さん。
「初代の『DREAM SLEEPER』は中国バスさんで運行されています。それを東京・大阪間で、さらに進化させるというスタンスで、両備ホールディングスさんと共同運行しています

 

■『DREAM SLEEPER』の車内装備

チルト(高さ)調整、リクライニング調整、フットレスと調整がスイッチで簡単に行えるほか、調光機能つきの照明、無料Wi-Fi、無料配布されるこだわりのアメニティグッズ(水、スリッパ、ウエットタオル、歯ブラシ、耳栓、アイマスク、ヘッドホンカバー)、オーディオ、コンセント(AC/USB)、プラズマクラスターイオン発生器など、車内で快適に過ごせる装備が充実しています。

その他、特徴的なのは、各個室に装備された室内カメラですが、プライバシーにも配慮した構造になっています。
「完全に個室になってしまうため、席の上にカメラを設置して、運転士のモニターから見えるようになっています。しかしこれは、あくまでも保安上の観点からのもので、お客様が立っていると頭が見え、立っているか、座っているかを確認するためのものです」

パソコンなどの作業もできる引き出しタイプの机
車内には無料Wi-Fiも装備されている
スイッチ1つでゼログラビティ(無重力)を再現する
話題のリクライニングシート

運転席の左右についたモニターで、
個室の安全確認ができる
客室の背後には保安のためのカメラや
緊急SOSスイッチも設置されている

アメニティグッズ(水、耳栓、アイマスク、歯ブラシ
ウェットタオルなど)とヘッドホン
リクライニングシートのスイッチと
プラズマクラスター

温水洗浄機能、水浄化機能つきトイレ
足元には、こだわりのじゅうたんと
アメニティグッズのスリッパ

温水洗浄機能、水浄化機能つきトイレ

■動く高級ホテルとしての『DREAM SLEEPER』

・高めの料金設定に込められた戦略

『DREAM SLEEPER』は、完全個室の豪華さのほか、高めと言われる20,000円の料金設定について、話題になります。その料金設定について、関東バス・丸山営業所の秋葉所長にお話を伺いました。

「バスを完全個室にすると、乗車いただけるのは11名です。バスの内部を相当改装していますので、採算ベースには料金が高めでないと厳しい。ただ、「動くホテル」という意味では、20,000円という金額は、新幹線で15,000円、ホテルに宿泊した場合で7,000円くらいと見れば、料金が高いことはないと思います」

そして何よりも「ホテルの宿泊や始発の新幹線を使うよりも、寝ている間に移動できて、時間を有効に使えるという利点もあります。現在、海外旅行客の影響で、ホテルもとりにくいという話も聞いていますので、それも含めれば、このバスの需要もあるのではないでしょうか」ということです。

■運行の現場から見た『DREAM SLEEPER』

・『DREAM SLEEPER』の運行体制

『DREAM SLEEPER』の運行体制について、関東バス・丸山営業所の石場副所長は「『DREAM SLEEPER』の運行担当者は10人で、通常の夜行高速バスとも兼務になります。『DREAM SLEEPER』は高速バスの中でもワンランク上になりますし、お客さまの動向には「快適さ」という点でも気を使うことが多くなります」と教えてくれました。

また、秋葉所長のお話では、その10名の方は、「一般の路線バスの運転士から20名を選抜し、さらにその中でもベテランの者を選抜しています」ということで、「もちろん、ただ10名を選ぶだけではなく、徐々に対応できる人員を増やしていく」ことが必要となります。

・豪華さの裏側で求められる、乗務員の細やかな接客対応

秋葉所長は、続けて次のように話してくれました。「ドアのノックする箇所が響くところだと、反対側のお客様も顔を出してしまうことがあります。また、女性のお客様などは逆にノックに気づかれないこともあり、ガラガラと開けると失礼になるので、ドアを少しずらす程度に開けて、気付いてもらいます。それから『よろしいでしょうか?』と声をかけながらドアを開けるなど、マニュアルでは説明しにくいような細かい配慮については、それを経験した運転士が、ほかの運転士に引き継ぎ報告などで共有するようにしています」ということです。

「入口の3段目以降は土足厳禁のため、使い捨てのスリッパをお出ししたり、夏はお水を乗車の直前まで冷やしておいて、乗車後に各部屋に配る、などの対応もあります」。また、池袋での乗車案内は「『DREAM SLEEPER』とは別便のバスが、10分後に出発するため、11名のお客様に対して、ひとり1分以内の対応が必要となる」そうです。「雨のときは傘立てに傘をおく対応など、あらかじめシミュレーションさせておく必要もあります」とのことで、マニュアルでは追いつかない、細かな接客対応があるのも事実です。
このほか、「専門の講師の方を呼んで、接客マナーの講習なども実施している」そうで、乗務員の方のきめ細かな対応力が求められる業務となっています。

利用者のニーズはどこにあるか?

「当初はビジネスユースを考えていましたが、往復で利用される女性のお客様もいらっしゃいます。今後は、ニーズに合わせてサービスを変えることも必要になるでしょう」と語るのは経営管理室長の久永さん。
「今のところTwitterやFacebookなどの反応を見ても、決してお叱りなどの評価はなく、よかったと思っています」

もちろん、これからの戦略や利用者のニーズを探るためには、「乗られている方が、実際にどのように感じているかが重要です。これからはお客様の声がひろえるような対応も、別途検討したいと思います」ということです。


編集後記

大手メディアからも大きな注目を集める業界初の完全個室化の高速バス、関東バス・両備ホールディングスの東京−大阪間『DREAM SLEEPER』。このバスの誕生の背景には、さまざまな方々の熱い想いと、現場での地道な努力と細やかな接客対応の積み重ねがあったことが、取材を通して見えてきました。他の交通機関との差別化を図り、新しいサービスの進化によって、バス業界がさらに注目を浴び、新しいニーズの掘り起こしにつながっていくことが期待されます。


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リフト付き空港リムジンバスが拓く、バリアフリー社会の未来とは?

リフト付き空港リムジンバスが拓く、バリアフリー社会の未来とは?

2016年3月31日に羽田空港国際線ターミナルと横浜シティターミナル間で開始された「リフト付き空港リムジンバス実証運行」が、間もなく1年を迎えます。2020年オリンピック・パラリンピック東京大会において、空港アクセスのバリアフリー化のシンボルともなるこの実証運行が、この1年でどのような成果を生み、どのような課題が見つかったのか、京浜急行バスの事例について取材しました。

写真は左から、運転士の眞野さんと添乗員の菊池さん(京浜急行バス)。

■羽田・成田両空港路線で始まったリフト付き空港リムジンバスの実証運行

リフト付き空港リムジンバスの専用停留所は
羽田空港国際線ターミナル1階からアクセス

●国内初!リフト付き空港リムジンバスの実証運行

「リフト付き空港リムジンバスの実証運行」は、2016年3月31日京浜急行バスによる「羽田空港国際線ターミナルと横浜シティターミナル間」を皮切りに、同年4月15日には東京空港交通による「羽田空港国際線ターミナルと東京シティターミナル間」、同年8月16日には、京成バスによる「成田空港~海浜幕張駅・幕張メッセ間」で開始されました。
リフト付き空港リムジンバスには、車体中央部にリモコン操作の乗降リフトが搭載されており、車いすのままバスの乗り降りができることがポイント。海外からの来訪者の増加が見込める2020年の「オリンピック・パラリンピック東京大会」を契機として、バスのバリアフリー化進展の切り札となることが期待されています。

 

■リフト付き空港リムジンバスの乗降のしくみ

●バスの到着からリフトで降りるまで

専用停留所に到着したリフト付き空港リムジンバスの降車の様子を見てみましょう。リフトによる降車には、通常10分~15分くらいの時間を要します。

車いす用のリフトが見えてきます
車体中央部の乗降ドアを開きます

リモコンでリフトを手前に出します
降車を待つ利用者

リフトを座席と水平の位置までアップ
肘かけと固定バンドをセット

リモコンでリフトを降ろします
添乗員がセットアップ状態を確認

■リフト付き空港リムジンバス運行実証の現状と課題

・リフト付き空港リムジンバス運行実証開始初期からの課題

京浜急行バスよると、リフト付き空港リムジンバス導入当初から課題としてあげられていたのは、大きくは次の3点だったということです。

①リフト使用時の乗降に時間を要する

はじめにご紹介した降車の様子からもわかる通り、リフトの昇降を操作する担当者と、リフトに乗る補助をする添乗員の2名体制で、安全確認を行いながら手早く対応する必要があります。それでも10分〜15分かかる現状に変わりはありません。

②トランクルームスペースが減少する

通常のリムジンバスには2つのトランクルームがあります。リフト付きバスでは、中央部のトランクルームをつぶして、リフト稼働スペースが確保されています。車いす利用者以外の利用者にとっては、トランクルームが少ないために、混雑時に重いトランクを車内に手持ちで持ち込むケースがないとも言えません。
「キャリーバックのご利用の多い空港連絡バスにとっては,トランクルームが減少してしまう事も大きな課題です」

③乗車定員が減少する

車いす利用者2名の座席を確保するためには、下の写真でもわかるとおり、車いすスペースの前後の座席を折りたたみ、各列4つ=合計8つの座席をつぶしたスペースが必要となります。

車いす乗車スペースの後方の座席
2座席が折りたたまれている
車いす乗車スペースの前方の座席
4座席が折りたたまれている

■運行実証への対応から生まれた新たなる課題

・一般利用者のサービス水準を低下させないためには何が必要か?

リフト付きバスの課題に対応し、一般利用者のサービス水準を低下させないために、特に苦心された点について伺いました。
「リフト付き空港リムジンバスは、乗合バスとしての定時運行の確保および一般利用者との混乗であるという側面も重要視しないとなりません。それを両立させるため,どういった運行計画および運用が望ましいのかを検討し,さらにそれを関係箇所と調整する点が苦労しました」

・一般利用者にも配慮した定時運行対策

また、リフト付き空港リムジンバスの定時運行のために、次のような運用対策が実施されています。
「リフトご利用の場合,原則,前日までの事前予約制としております。羽田空港(国際線ターミナル)および横浜駅(YCAT)の乗車場所を一般利用者とは異なる場所とし,バス出発時刻の15分~20分前までに乗車場所にお越しいただく様ご案内をしています」
さらには、「リフトご利用のお客様およびその介添の方の乗車後,一般の方のご利用のため,通常の乗場に停車します」
これらの対策によって、一般利用者にも配慮した定時運行が可能となりました。

・運用対策から生まれた新たなる課題

しかし、こうした一般利用者への配慮が、一方で車いす利用者にとっては不利益を生む現実があります。

「通常の羽田空港~横浜駅(YCAT)線は国際線⇔国内線第2ターミナル⇔国内線第1ターミナルと経由して発着しておりますが,当該路線は国内線ターミナルを経由しておりません。もし,国内線ターミナルに車椅子でリフト利用を希望するお客様がいた場合,現状の昇降時間を勘案すると後続車に抜かれてしまい,当初から当該車両にご乗車いただいているお客様のご理解を得られないと感じているためです」

リフト付き空港リムジンバスは、起点と終点が限定され、路線途中での乗降や国内線ターミナルの経由ができません。前日までの事前予約制、出発時間より前の乗り場到着など、車いす利用者への負担が大きいことも事実です。
「リフトを使用しての車いすの方のご利用は2016年3月31日運行開始から,2月8日現在のところ、12名となっております。実際にリフトを使用しての車いすの方のご利用は,残念ながら殆どいない状況です」
利用者が極端に少ない現実が、それを物語っています。

「山積の問題をクリアするために,結果的に専用ダイヤを作成(増便)し,運行をせざるを得ない状況です。乗務員不足が深刻化している現状において,その様な対応での運行の常態化は難しいと考えています」

■現場の視点を大切にしながら、利用者に配慮

・リフト付き空港リムジンバスと向き合う乗務員

さまざなま課題がある中でも、安全・安心な運行のために、京急バスでは次のような取り組みを行っています。
「ご利用者や歩行者の安全確保から,常に添乗員を乗務させ,ツーマン運行としております」
リフトの操作まで含めて接客対応が求められるため、通常のリムジンバスと比べても、乗務員への負担はどうしても大きくなります。運転士、添乗員の2名体制で対応することで、一般利用者に配慮しながら、車いす利用者への細やかな配慮を欠かさないような体制づくりが重要なポイントです。

さらには、乗務員向けに『リフト付きバス運行マニュアル』を作成し、当該路線(羽田空港~横浜駅(YCAT)線)に乗務する全運転士の習熟を図っているそうです。

京急バスの眞野さん

●インタビュー・京急バス 眞野さん

空港リムジンバスの運転士、リフトの操作担当者としてご活躍の京急バスの眞野さんに、運行実証を担当された感想を伺いました。
「50名程度のスタッフが交替で担当しています。東京羽田-横浜YCAT(ワイキャット)間を、ダイレクトに行き来できる点を評価いただいていると思います。横浜で行われた障害者スポーツの国際大会では、実際に海外からの車いすのお客様にもご利用いただきました。東京オリンピック・パラリンピックを想定できるものだったと思います」

京急バスの菊池さん

●インタビュー・京急バス 菊池さん

空港リムジンバスの添乗員を務める京急バスの菊池さんに、利用者のサービス対応の中で、特に気をつけている点について伺いました。
「女性のお客様の場合、昇降時には外向きになりますので、ひざ掛けを用意させていただいたり、できるだけていねいなサポートを意識しています」

■リフト付き空港リムジンバスの普及のために

●リフト付き空港リムジンバスの普及のために必要なこと

「今後導入路線を増やすとなりますと,リフトを扱える停留所が限られる(上屋,歩道幅を含め車いすの導線,バス停の占有時間など)と思われ,さらに雨の日などにおいては,利用者が濡れてしまう等,サービス面にも問題が想定されます」

リフト付きバス停留所増加や停留所の整備も含めると、もはや、バス事業者だけでは解決できない課題が山積みと言えるでしょう。

これらに対応するためには、「車両面,運行面などの課題を,関係機関を含め共有し,その解決に働きかけをしたいと考えています。具体的には,車両メーカーにおいては,少なくとも乗降時間に要する時間が大幅に短縮をした車両の開発を,道路管理者やバスターミナル等に対しては,リフト操作が安全に行える停留所の整備等をお願いする次第です」

2020年オリンピック・パラリンピック東京大会において、空港アクセスのバリアフリー化のシンボルともなるリフト付きバスの運行が本格的に展開できるかどうかは、この実証運行から得られたノウハウや課題を共有し、より具体的に対応することが鍵となりそうです。


編集後記

リフト付き空港リムジンバスの運行実証が間もなく1年となります。今回の取材では、課題が山積みのリフト付きバスの現実を目の当たりにしましたが、バリアフリー化のさらなる進展のためには、どうしても乗り越えなければならない重要な一歩と言えるでしょう。今後、リフト付きバスがどのような発展を遂げるのか。オリンピック・パラリンピック東京大会を迎える私たちのバスが、どのような姿になっているのか。空港アクセスのバリアフリー化は、一車種の機能や、一業界だけの努力で解決できるような単純なものではなく、多くの課題を乗り越えてこそ実現できるものです。課題が克服され、多くの方々の苦労が実り、空港アクセスのバリアフリー化が進むことを期待しています。


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